影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
百合
甲斐様と並び、片膝をつく。
徳川のとある武家屋敷。
その一室。
私達の目の前には、年の頃四十くらいの男が立っていた。
壮年、といえばいいのだろうか。
しかしその眼光には今だ鋭さがある。
私達隠密とはいささか違った気配。
だが戦場に立つ者の眼。
そして指揮官としての責務を果たす眼であった。
「お主が二代目下山甲斐か。噂は聞いている。あの天正伊賀の乱における織田信長の猛攻から生き延びた猛者だとか…」
男は厳しいながらも、時折優しさを感じさせる表情で私を、そして甲斐様を見た。
「よくぞ我が下に来てくれた。わしが現伊賀忍軍頭領、服部半蔵正成じゃ」
徳川のとある武家屋敷。
その一室。
私達の目の前には、年の頃四十くらいの男が立っていた。
壮年、といえばいいのだろうか。
しかしその眼光には今だ鋭さがある。
私達隠密とはいささか違った気配。
だが戦場に立つ者の眼。
そして指揮官としての責務を果たす眼であった。
「お主が二代目下山甲斐か。噂は聞いている。あの天正伊賀の乱における織田信長の猛攻から生き延びた猛者だとか…」
男は厳しいながらも、時折優しさを感じさせる表情で私を、そして甲斐様を見た。
「よくぞ我が下に来てくれた。わしが現伊賀忍軍頭領、服部半蔵正成じゃ」