影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-

甲斐

父上…!

父上父上父上父上父上!!

俺は完全に普段の平静さを失くし、目の前の肉親のみに意識を奪われていた。

何故ここにいる?

何故秀吉の護衛をしている?

秀吉の配下は甲賀忍軍だ。

それを知って肩入れしているのか?

疑問ばかりが浮かび上がる。

しかし初代はそんな疑問には何一つ答えず、俺に背を向けて走り出した!

「逃がさん…!」

隠密の脚力は常人の比較にはならない。

険しい山道さえも平地の如く走る。

山伏や修験者と同等の脚力と言えばわかるだろうか。

こと駆ける事に関して言えば、隠密を撒く事ができる者は皆無だった。

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