影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
忍者刀を逆手に構え、地面を踏みしめる。

…初代の実力は数年前の戦いで…いや、それ以前、幼少の時からよく知っている。

伊賀十人衆の一人。

伊賀忍軍上忍。

名のある隠密は歴史上何人も存在するが、初代下山甲斐も、その中に十分に名を連ねられるであろう。

俺にとってはそれほどの隠密だった。

初代もまた、身構える。

俺とは違い、無手。

だが両手には手甲。

得物も以前戦ったときと変わらないようだ。

鋼鉄の手甲。

盾にも、矛にもなり得る得物。

その短い間合いが逆に忍者刀を持つ俺にとっては死角となり、いいように嬲られる結果となった。

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