影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
初代が離れた位置から俺を見てほくそ笑む。

「構わぬぞ。二人がかりで来い。お前のような未熟者は、くのいちの手を借りて二対一で戦う無様が似合いだ」

「何を…甲斐様を愚弄するな!」

吠える百合。

俺は彼女を制する。

「初代…」

手にしていた忍者刀を地面に突き立て、代わりに苦無を逆手に握って構える。

「苦無に持ち替えた事で、これまでの貴様の有利はなくなる」

「わかりきった事を得意げに言うな。苦無は忍者刀よりも刀身が短い…その分わしの手甲との死角の差がなくなり、五分に戦えると考えておるのだろう」

そう言った初代の身が、背後の景色を透かせる。

分身の術による残像!

「だがその程度でわしを討てると思うのならば浅はか!」

< 182 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop