影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
「甲斐様」

百合が俺の問いかけに答える。

「百合の異名をご存知ですか?」

「……」

思わず立ち止まり、振り返る。

百合は笑っていた。

「『毒百合』…見た目は美しくとも猛毒を持つ華…百合はそういうものなのだそうです」

「……」

百合の言葉の真意が読めない。

…彼女はもう一度、クスッと笑った。

「父親殺しの血も涙もない男には、似合いの華とは思いませんか?」

成程…。

俺は俯き、苦笑いを浮かべる。

「違いない」



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