影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
表情を曇らせ、言いよどむ頭領。
故に、俺は敢えて己からその点に触れる事にした。
「父が…初代下山甲斐が、この件に絡んでいるやも知れません」
「甲斐…!」
俺の言葉に頭領はハッとする。
俺は更にはっきりと告げた。
「理由までは明確ではありませんが…初代は北畠に取り入り、伊賀を彼奴らに売った…伊賀の同胞を裏切ったのかもしれませぬ」
「滅多な事をいうものではない」
頭領が俺をたしなめる。
が、頭領自身もその線を疑っていたのは間違いないだろう。
北畠の居城に出入りしていたという初代下山甲斐。
そして此度の北畠の不穏な動き。
動機はどうあれ、初代が伊賀の里への進軍を進言したのは濃厚だった。
故に、俺は敢えて己からその点に触れる事にした。
「父が…初代下山甲斐が、この件に絡んでいるやも知れません」
「甲斐…!」
俺の言葉に頭領はハッとする。
俺は更にはっきりと告げた。
「理由までは明確ではありませんが…初代は北畠に取り入り、伊賀を彼奴らに売った…伊賀の同胞を裏切ったのかもしれませぬ」
「滅多な事をいうものではない」
頭領が俺をたしなめる。
が、頭領自身もその線を疑っていたのは間違いないだろう。
北畠の居城に出入りしていたという初代下山甲斐。
そして此度の北畠の不穏な動き。
動機はどうあれ、初代が伊賀の里への進軍を進言したのは濃厚だった。