影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
「甲斐」

重苦しく頭領が声を発する。

「一つ問う…もし初代…お主の父親が伊賀に謀反を企てていたとして…お主は実の父をその手で討つ覚悟があるか…?」

「……」

たやすく答えられる質問ではなかった。

父は…初代下山甲斐は、俺の親であると同時に忍術の偉大なる師だ。

俺がこの歳で中忍となり、小頭として下忍を従えるまでになれたのも、全て父の下で厳しい修練に耐えたお陰。

『伊賀十人衆』の一人にまで数えられる優秀な上忍である、父に稽古をつけてもらったお陰だ。

その恩義は一度たりとも忘れた事はなかった。

勿論今後も忘れる事などない。

父、初代下山甲斐は歴史に名を残すであろう天才隠密だ。

しかし。


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