影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
女忍は、主に力一辺倒では太刀打ちできない相手に対して下女などと偽って送り込まれ、機密情報の収集や暗殺などを請け負う。

その為、全身黒ずくめの忍者装束を着て男忍と同じような任務に就く事は、実際には殆どなかったらしい。

しかしながら、籠絡する相手に真剣に惚れ込んだり、裏切ったりするなどの危険が付きまとっている為、それを防ぐ為に連絡役兼監視役の忍者が常に行動を監視し、裏切りの気配を見せた時には容赦無く殺害していたとも言われる。

何にせよ、私のように男の忍に混じっての実戦部隊として活動するくのいちは珍しいという事だ。

…戦国の世において、女は道具。

それ以上でもそれ以下でもない。

政略結婚に使われたり、男の慰み者になったり、ただの貢ぎ物であったり。

私はそういう扱いが死ぬほど嫌だった。

女だから、女の癖に、女なんて。

そんな言い方をされて虐げられるくらいならば、男と同じように戦場に立ち、男と同じ扱いをされて死んでいった方がまだマシだった。

幸い、甲斐様は私のそんな考えを理解してくださり、男の隠密と同様に鍛え上げて下さった。

この人にならば命を預けてもいい。

甲斐様は他の男とは違う。

それが、私が甲斐様に慕情を抱く理由の一つでもあった。



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