影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
甲斐様の命令の下、私達は早速里を出て丸山城へと向かう。

丸山城には北畠軍の兵が一万近く陣取り、城の修繕と護衛を行っているという。

その厳重な警備を掻い潜り、落城させるのが私達の任務。

既に別働部隊の伊賀忍者が丸山城周辺に潜伏しているらしい。

その別働部隊が城に火を放ち、混乱したところで私達の部隊と他の部隊が突入し、北畠の軍を一掃する。

数の上では圧倒的不利だが、こちらにはそれを補って余りある地の利と、何より『忍術』がある。

真夜中の山中を、まるで昼日中の平原を進むかのごとく、私達の部隊は駆ける。

その性質上、隠密は夜目が利く。

灯火目付(とうかめつけ)という肉体鍛錬法がある。

視力を養う為に用いられるもので、暗い部屋で行灯に火を燈らせ、和紙の部分に針で穴を適当な数だけ開け、その穴を遠くから数える。

この動作を毎日行い、次第に穴の数を増やしていく。

また視力を鍛える他の方法として、真っ暗な部屋や押し入れと明るい部屋を何度も行き来する方法が伝えられている。

こうして夜目を鍛えた隠密は、月明かりのない闇夜でも自在に行動が可能となるのだ。





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