影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
「城の外に出るな!伊賀者どもが罠を張っている!」

「そちらの入り口は駄目だ!待ち伏せされている!」

「気をつけろ!敵はこちらの具足を奪って身につけている!仲間のふりして襲ってくるぞ!」

喧騒と怒号の飛び交う城内で、様々な情報が行き交う。

真実もあれば、嘘の情報も紛れている。

虚と実、入り乱れる情報の中で北畠の軍は完全に状況を見失い、信に置くべきはずの仲間同士ですら疑念を向け、殺し合いを始める。

実際に俺達伊賀忍軍が手をかけた兵卒は、一万のうちの三分の一にも満たなかった。

後の兵卒は炎に巻かれ、同士討ちを始め、次々と自滅していく。

ほんの数百数千しかいない隠密によって、北畠の軍は大敗しつつあった。

こうなってしまうと、最早敵の具足は必要あるまい。

俺達は具足を脱ぎ捨て、いつもの忍装束姿となる。

「貴様ら!見つけたぞ!」

ようやく真の敵である俺達の姿を見つけた兵卒の一人が、槍を構えて突進して来た。

しかしすっかり狼狽しきっている。

冷静さを欠いた兵卒など、正面から戦いを挑んでも敵ではなかった。

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