影を往く者、闇に逝く者－戦国隠密伝－
惑わされ、追い詰められ、動揺を誘われ。

そういった精神状態も、分身の術に一役買った。

冷静な時ならば簡単に見破れる術も、動揺していれば、あたかも呪術妖術のように感じられる。

人間の心理の隙を突く。

隠密を敵に回した時、真に恐ろしいのは術でも武具でも技でもなく、その一点に尽きる。

散々俺の残像を突き、払い、疲労する兵卒。

その疲れきった背後から。

「がっ！」

百合が忍者刀で一突きにし、とどめを刺した。

忍者刀は、日本刀と違って斬る事に特化した刀ではない。

忍具としての機能を付加されている。

刀自体は斬るよりも突きに向いているので、鞘自体にも相手を突き貫く為の機能がある。

鞘から刀を抜き放つのではなく、鞘に入ったまま相手を突き刺す事も出来る。

また、鞘は先を外すと筒状になり水中での息継ぎや壁に押し当てて隣の部屋の話を盗み聞きすることもできる。

更に忍者刀は鍔の部分が頑丈に作られているので、高い塀を乗り越える為の足場として利用できるようになっているのだ。

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