影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
そんな事を知る由もなく、俺達は伊賀の里への帰路についていた。

凱旋である。

僅か数百数千。

数の上では圧倒的だった北畠軍を、知略と卓越した体術で撃退した。

我々の日々の修練は決して無駄ではなかった。

その事に下忍達は喜びを露わにし、百合もまた少女らしい笑顔を浮かべる。

…その陰で、俺の心境は複雑だった。

これまで何の動きも見せなかった北畠軍の、突然の侵攻。

伊勢松ヶ嶋城に出入りしていたという初代下山甲斐。

この二つを結べば、自ずと初代の伊賀に対する謀反という答えが出てくる。

俺は苦虫を噛み潰したように、険しい表情を浮かべる。


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