影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
腕組みし、腰を下ろす。

前々より、伊賀の里に居を構える忍の存在は知っていた。

武田信玄の乱破衆然り、上杉謙信の軒猿然り、隠密はこの戦国の世にあって、まさしく影の存在として諸国の武将の力となっている。

わしとてその存在を軽んじていた訳ではない。

軽んじていた訳ではないからこそ、軽率に伊賀の里に手出しする事なく、しばしの静観を保っていたのだが、それも信雄のたわけめが迂闊な真似をするせいで台無しになってしまった。

術を使い、幻惑し、謀り、心理の隙を突いてくる忍の者。

我ら武士とは戦術も心構えも違う。

口惜しいが、何の策も無しに仕掛ければ、如何に第六天魔王と呼ばれたわしですら敗戦は免れぬ。

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