影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
思案していると。

「お恐れながら、信長様」

将の一人が進言する。

「信雄殿は伊賀より離反した隠密より、今が伊賀を討つ好機だと進言されたと聞いておりまする。その隠密を今一度利用してみては如何でしょうか」

「離反した隠密だと?」

成程、伊賀の内情に詳しい者を使う訳か。

「しかしただ利用するだけでは、信雄の二の舞になりかねぬ」

「ですからただ情報を引き出すだけではなく、今回はもっと具体的な策を練らせるのです。例えば…」

将がニヤリと笑う。

「伊賀の里への侵入経路を案内させるなど如何でしょう」

「ほぅ…」

俗人には近づく事さえかなわぬという隠密の隠れ里。

その経路を吐かせるというのか。

敵陣深くに攻め込む事を得意とする隠密どもだが、逆に攻め入られる事には存外に脆いやも知れぬな…。

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