影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
だからこそ。

下忍とはいえ、私も伊賀の隠密の端くれ。

里の危機には尽力したいと考えていたのだ。

「百合、お主は女の身だ…信長は女だろうと加減などせぬ。下手をすれば女だからこそ、男以上に無惨な死に様を晒す羽目になるやもしれぬ」

「それでもです」

私は一歩も譲らず甲斐様に食い下がった。

「私は伊賀の隠密…甲斐様に育てられたくのいちです。ここで血の滲むような修練の成果を見せず、どこで見せましょう」

「…聞き分けのない奴だ」

言いつつも、甲斐様の表情には笑みが浮かんでいた。

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