影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
甲斐が身構える。

「信長めが動くでしょうか?」

「うむ、恐らくはな」

「ならば早速下忍達に招集をかけて…!」

動こうとする甲斐を。

「待て」

わしは呼び止めた。

生真面目だが少々せっかちすぎる。

難を言うならそれが甲斐の欠点だ。

「お前の他にも物見斥候の忍を放っている。そやつの報告を待とう。それに」

わしには多少の余裕があった。

「信長の軍は伊賀の里には入っては来れぬよ」

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