影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
わしの問いかけに対し。

「かねてより協力体勢にあった筈の甲賀隠密、多羅尾光俊(たらおみつとし)の手引きにより、伊賀から二人の離反者が発生し、織田方の蒲生氏郷の道案内をおこなった模様です…!」

「くっ…何という…!」

甲斐が忌々しげに歯噛みした。

初代下山甲斐だけでなく、またも伊賀から謀反を起こすものが出ようとは。

そしてそれ以上に、わしは古来よりの固い盟約、それが既に形骸化していた事を思い知らされる。

甲賀は我ら伊賀の隣人。

同じく忍道を志す頼もしき同胞。

そう考えていたのは、わしだけだったというのか…!



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