影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-

百地

「来たか…!」

大地を揺るがすような鬨の声。

わしは手にした忍者刀を握り締めた。

「手筈通り、女子供は砦に籠もらせておろうな?」

「はい、仰せの通りに」

わしの言葉に甲斐が頷く。

甲斐の傍らには、これまで任務を共にしてきた下忍達。

そして百合の姿もあった。

「百合、お前も砦に逃げても良いのだぞ?」

「いえ」

わしの言葉に百合は首を振った。

「私も伊賀隠密の端くれ。ここは頭領や甲斐様と共に、信長の軍勢と戦います」

「そうか…」

ついこの間まで幼子だった百合が…よくぞここまで立派なくのいちに育ってくれた。

目頭に熱いものを感じつつ、わしは気持ちを引き締めた。

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