影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
だが、兵士の悲鳴が聞こえる度に。

「どうした!」

「何があった!」

雨後の筍の如く、信長の兵は湧いて出てくる。

数千と四万という兵の差。

その事を思い知らされる。

四人五人仕留めた所で、それは焼け石に水に過ぎないのだ。

むしろ手裏剣の方が足りなくなるくらいだ。

と。

「見つけたぞ、小娘が」

背後から声。

咄嗟に飛び退く!

同時に私の元いた場所に、槍が突き立てられた!

振り向くと、大柄な男が舌なめずりしながら立っていた。

…殺気渦巻く戦場。

こうも混乱に満ちていては、敵の気配すらまともに察知する事ができなかった。

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