影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-

甲斐

伊賀の里を縦断するように流れる小川。

そのせせらぎが鮮血に染まる。

伊賀隠密の血。

信長の軍の兵士の血。

最早どちらのものなのかは判別も難しい。

その赤いせせらぎの中に。

「ぐふぁ…」

また一人、兵士が頭から突っ込んで喀血した。

喉には刃で貫かれた傷。

俺が忍者刀で突いたのだ。

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

右に逆手に握った忍者刀、左には百合に渡したのとはまた別の苦無。

二つの忍具を構え、俺は呼吸を乱していた。

周囲には、ぐるりと取り囲むように信長の軍の兵士達。

「甲斐」

頭領が護衛の下忍達を従えつつ、俺に声をかけてきた。

「やはりわしも加勢する」

しかしその言葉を。

「無用です」

俺は一蹴した。

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