影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
戦況は不利だ。

何しろ数が違いすぎる。

俺や頭領といった上忍、中忍は何とかそれでも戦えるものの、この伊賀の里の大半は下忍で構成されている。

つまり今だ修行半ばの未熟な隠密達だ。

戦に慣れていない。

下手をすれば、この戦いが初陣という者さえいた。

対する信長の軍は百戦錬磨の強者ばかり。

場合によっては俺ですら手こずる。

だが…。

俺はじりじりと動きながら、信長の軍を牽制する。

頭領をここで失う訳にはいかない。

伊賀忍軍頭領・百地丹波。

この方の統率力があればこそ、伊賀の隠密達はこの戦力差でも何とか踏みとどまっているのだ。

ここで頭領が殺られてしまえば、伊賀忍軍は一気に統制を失ってしまう。

頭領の死は、伊賀総崩れに繋がるのだ。


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