影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
「さぁ頭領…この場は俺に任せてお早く…」
振り向く事なく俺は言う。
「く…」
頭領の歯噛みする声が聞こえた。
「せめて伊賀十人衆が里におれば…」
伊賀十人衆。
多くの隠密を輩出してきた伊賀の里にあって、突出した才を持つ十人の天才隠密達。
しかしその殆どが高齢の為に他界していたり、里を離れていたり、隠居して既に忍の一線を退いている。
我が父、初代下山甲斐にいたっては行方知れず。
いや、或いは信長の軍勢として、この里に紛れ込んでいるやもしれぬ…。
「ともかく頭領、早く行って下さい。伊賀は貴方を失う訳にはまいりませぬ」
「…………すまぬ」
苦渋の決断。
頭領は護衛の下忍と共にその場を駆け出した。
振り向く事なく俺は言う。
「く…」
頭領の歯噛みする声が聞こえた。
「せめて伊賀十人衆が里におれば…」
伊賀十人衆。
多くの隠密を輩出してきた伊賀の里にあって、突出した才を持つ十人の天才隠密達。
しかしその殆どが高齢の為に他界していたり、里を離れていたり、隠居して既に忍の一線を退いている。
我が父、初代下山甲斐にいたっては行方知れず。
いや、或いは信長の軍勢として、この里に紛れ込んでいるやもしれぬ…。
「ともかく頭領、早く行って下さい。伊賀は貴方を失う訳にはまいりませぬ」
「…………すまぬ」
苦渋の決断。
頭領は護衛の下忍と共にその場を駆け出した。