影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
全身に闘気を漲らせ、俺は歩を進める。

「どうした…」

俺はカッと目を見開く!

「来ぬのかと聞いているっ!!!!!!」

その咆哮に、大気が震えた。

魂魄すら四散するかのような、臓腑を鷲掴みにするような気迫のこもった声。

その声だけで、織田軍の兵士は腰が引け、脅えて動けなくなってしまった。

…『忍者八門』という言葉がある。

全ての隠密流派に通ずる、必須の技術。

それを忍者八門というのだが、その中の一つに『気合術』というものがある。

発声、または身体より発する気迫のみで敵を怯ませ、戦意を喪失させる。

隠密の本来の目的は敵を倒す事ではない。

情報収集や潜入がその任務。

その為には敵と闘い、仕留める事すら時として無駄な労力になる事がある。

だからこのような技術で、敵を殺さずして怯ませるのだ。

ことごとく腰を抜かす織田軍の兵士達。

「…命拾いしたな」

俺は周囲を警戒しつつ、頭領達の後を追うのだった。

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