影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
俺は左手を封じられたまま兵士を睨む。

おのれ甲賀…伊賀を裏切るだけに留まらず、忍具まで織田軍に与えたというのか。

あの恥知らずどもめ…!

力任せに鎖を引くものの、かえって腕に鎖が食い込む。

「さぁこっちへ来い…真っ二つにしてくれようぞ」

鎖を引っ張り、俺を引き寄せようとする兵士。

大柄な分、その力は相当なものだ。

力比べでは分が悪い。

どうする…敢えて敵の懐に飛び込んで仕留めるか…。

一瞬判断に迷う。

その時!

「!」

背後の草むらより飛び出してくる影!

俺は思わず舌打ちした。

伏兵が潜んでいたか!

忍者刀を構え直す。

だが。

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