影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
その影は手裏剣を打ち、見事兵士の眉間を貫いた!

声もなく倒れる兵士。

腕に巻きついていた鎖分銅がほどける。

その影は。

「甲斐様、ご無事ですか!?」

娘の顔に戻り、俺の元に駆け寄ってきた。

「百合!」

俺もまた、柄にもなく顔をほころばせる。

「無事だったのか!」

「はい」

笑顔を見せ、百合は頷く。

「何とか織田軍の兵士を蹴散らしつつここまで参りました。甲斐様もご無事で何よりです」

「ああ…だが戦況は芳しくない」

俺は素早く周囲に気を配った後、走り出す。

「話は走りながらだ。頭領が先行している」

「はいっ」



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