影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
「甲斐、百合」

頭領は私達二人の名を呼んだ。

「それから歳若い忍達もだ…お前達はここからの戦いに参加する事は許さん」

「な…!」

甲斐様が驚愕する。

「何故です!?ここまで来て何故我々が…」

「たわけ、お主らは伊賀を滅亡させるつもりか」

頭領は強い眼差しで甲斐様を睨む。

「お主ら若い隠密達は、次世代の希望じゃ…お主らこそが、戦乱の世を乗り越え、忍道を次の世代へと語り継いでいかねばならぬ…その為にも、ここで討ち死には許さぬ。伊賀忍軍頭領としての命令じゃ。泥水を啜ってでも生きよ」

「頭領…」

「百地様…」

頭領の言葉に、私は慟哭した。

甲斐様がむせび泣いた。

砦を出て行く頭領の最期の背中。

私は生涯忘れない…。


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