影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
「さて…」

とりあえずは追っ手もなさそうだった。

俺達は歩きながら、今後の行動について話し合う。

「とりあえずは安全な場所で、しばらく身を潜めるしかないな」

信長とて、里での戦で全ての伊賀隠密を葬り去ったとは思ってはいまい。

伊賀の残党狩りに躍起になっている筈だ。

遠からず兵を放ってくるだろう。

どこか山奥の村にでも身を隠し、農民として数ヶ月は暮らしてみるか。

「大っぴらな動きは出来まい…隠遁生活になるぞ、百合」

「構いません」

俺の言葉にも、百合は心底不満を感じぬような表情で答えた。

「百合は甲斐様のおそばにいられるならば、どのような暮らしでも満足です」

「む…」

どうもその物言いは、いらぬ誤解をしてしまいそうだな…。

「ともあれ、どこか村を探して…」

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