影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
「え…!?」

その場にいた者の中で、声を上げたのは百合だった。

「武田信玄って…八年前に死んだ、あの戦国武将の…?」

…俺も初代も、百合の問いかけには黙している。

「信玄は…確か病死だった筈では…それに八年前というと…まだ甲斐様は下忍の身で…修行中だった筈では…」

「……」

尚も俺は口を固く結ぶ。

…百合は驚愕の瞳で俺を見た。

「本当なのですか?甲斐様…僅か十三歳で…武田信玄の命を奪ったなどと…」

「……」

彼女と目を合わせぬまま。

俺は静かに頷いた。

「真実だ」

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