ライン
教師
先生はその日、私を自分の部屋に入れた。
「煙草、全部やるよ」
何故かいろんな銘柄の煙草が何箱もスーパーのビニール袋に入れられていた。
「教師がそんなんでいいの?」
これは一応厭味のつもり。
「俺はもう吸わないから」
そう言った顔はただの若い男だった。
そのビニール袋ごと鞄に突っ込んだ。
「ありがと」
「じゃあもう遅いから送るよ」
後ろから私の肩を掴んで玄関まで押してゆく。
私は茶色のローファーに足を滑り込ませた。
「早くドア開けて出て」
狭い玄関で、靴を履けずにいる先生を振り返った。
「私まだ帰らないよ」