遊女と経営者の恋愛事情
「とにかく行こう」
私の腕を掴むと無理矢理車へ乗せて
スーツケースを後部座席へと置く。
今、頭が空っぽで
思う様に…体が動かなくて……。
抵抗して逃げる事だって出来るのに
脚が震えて逃げられない…。
一樹さんは直ぐさま車を運転して
海沿いの道を走って行く。
「…これ。龍也から預かってる。本当は家へ着いてから渡してくれって言われてたんだけどな」
一樹さんが差し出したのは
黒い革使用の手帳だった。