そしてきみはどこにもいない
薄い恋をしている、そんな感じ
 君は幸せだったのかな。
 此所にいて良かったのかな。
 私の選んだ方向は間違っていなかったのかな。
 それでも、会えて良かった。


 *

 朝一番に目にはいるのはお気に入りの時計であり、頬に当たっているのはカーテンの隙間から漏れてくる日の光だった。
 朝が来たことを物語っている。まだ五月の半ばだと言うのに最近はずっと暑かった。
 一度よろよろと立ち上がって未だに鳴り続けている目覚まし時計を止め、また床へ潜り込んだ。
 暑いのは暑いが、どうしても眠気には勝てる気がしない。

「起きなさい!」と母親の罵声に近い目覚まし時計の音よりも大きな声を聞いて、ようやく起きたらすでに八時前であり。
 やばい、とは思ったが遅刻なら遅刻で仕方がない。

 ポジティブだねえ、とよく言われるが、そんな風に自分でも思ったことがない。今年十七歳になる私は、どうしても学校へ行くのが億劫だった。

「あーさっ! おはよ!」
 そんな眠気も外へ出れば吹っ飛んでしまう。目の前には小学校からの親友の美波が居た。おはよう、と欠伸をしながらも答えると「遅刻だよ」と苦笑された。

「だぁーって眠いんだもん。元気だね、美波は」
「おせーよ、ばあか。この遅刻魔」
 美波の横からひょっこり顔を出したのは、もういつからだろうか、人生の半分は一緒に居るであろう幼馴染みの悠が居た。
 高校二年生にもなって身長158センチのチビである。
 そして泣き虫で、昔はあんなに可愛かったのに、と懐かしむことも屡々だ。今では生意気とか言う分類に入るわけだが、これはこれでもムードメーカーであったりする。
 彼の顔を見るとどうしてもやる気が失せてしまうのはどうしてだろう。
 

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