そしてきみはどこにもいない
 廊下できゃーきゃー騒いでいるのはどうやら女子達らしい。
 そんな中で、一人教室に残っていた。悠も美波もどこへ行ったのだろう、と立ち上がった時だ。

「ねーっ、麻もおいでよ! もしかしたら話せるかもよっ」
「いや、私は、いいよ。ね、」
「そんなこと言わないでっ今フリーらしいよ!」

 それと私となんの関係があるのだろうか、と思いつつ葵に引っ張られるまま廊下に出た。
 先ほどあらかわクン、と呼ばれたその葵曰くイケメンらしい人がそこに居た。
 女子が彼を取り囲んでいたことだけ覚えている。
 一瞬横顔だけ見えたが、格好いいのかどうなのか、それは曖昧だった。


 * 

「あらかわぁ?」

 いたいたそんなヤツ、と言った感じで悠は目を見開いた。
 新川って? と美波が復唱すると「あのイケメンとか言われてるやつだろ」と悠は自分のことでも無いのに誇らしげに笑っていた。
 どうやら悠とその新川は同じクラスらしい。B組と言えばそうなのだが。
 
 格好いいの? と聞けば、悠はすぐにはその質問に答えず「なにナニ、気になる?」とにやにやした目でこちらを見てきた。 
 それに倣ったのか美波も同じように私を見、含み笑いをすると「ようやく麻にも春が来たかあー」とまたこちらもにこにこして言った。

 そんなんじゃないよ、と言ったけれど通じただろうか。
 そこら辺も曖昧に、「麻ちゃんも遂に恋をするときが来たか」とまだ言っている悠に蹴りをいれながら、何故だかぼんやりとあの横顔を思い出していた。

 本当に一瞬のことなんだけれど。

 
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