イチ*コイ
桜の思い出
見慣れた部屋には、段ボールの山。
開け放たれた窓から爽やかな風が舞い込む。
――大森 斗真、23歳
「ふぅ…」
一段落ついて、何も敷いていない床に寝転んだ。
ふと、視界に入ったアルバム。
腕を伸ばして…届かない。
1つ舌打ちして、俺は匍匐前進をしてアルバムを手にした。
「こんなとこにあったのか…」
忘れてったらどうするのかねぇ…。
じんわりと暖かい何かが心に入り込んだ。
懐かしくなって、表紙を開ける。
始めは学校風景。
そして職員紹介…。
次はやっとクラスだ。
俺は6組だったからとばした。
バーコードハゲの担任に、見覚えのある奴等の顔。
指でなぞっていって…ある女のところで止まる。
思えば、俺の青春はこいつにつぎ込んだかもしれない。
そう思ってぼーっとしていると、何かが入ってきた。
ふわりと舞う、淡いピンクの桜の花びら。
あぁ、そうだ…
あいつを見つけたのも、こんな日だった。
開け放たれた窓から風と花びらが侵入する。
俺の、青春の始まり――…