イチ*コイ
黙るように睨み付けて手を離す。
「…腹筋はわかるけど、何で階段…?」
「何かいい感じになるんだよ。
あと、正しい姿勢!」
「何かいい感じって、適当な…」
理由は忘れたけど、やることはあってる。
パシらされたからな…。
「大森くん、何か目遠いよ?」
「気にすんな。間食すんなよ!?」
「はい…」
あと何かあったっけかなー。
さすがに忘れてきてんだけど。
あぁ…つかねむ。
「ふああぁぁ…っ、あー!」
「おっきぃ欠伸…」
「うるせっ」
頬杖をついて瞼を下ろした。
意識が墜ちていく中、優しい声が微かに聞こえた。
その声は、多分…おやすみって…言った。
「…く…!…ん!おぉ…!」
「――っ」
「もりく…ね、」
…誰だ、この声…。
乃亜…か?
「の…」
「――大森くん!起きてよ…っ」
「…美華?」
どアップで写るのは黒縁眼鏡の女。
あぁ…この眼鏡もなんとかしねぇと。