イチ*コイ



 下げられた視線のせいで目は合わない。

 ああ…イラつく。


「ぁ、あの…っ…と、トイレ…っ!」


 そう呟いて教室から逃げ出す。

 ちっ…あの野郎、諦めるかってんだ。

 美華を追って教室から出ようと出入り口に向かう。


「斗真、何で九条ちゃんに構うの?
 放っとけばいいじゃんっ」

「そうだよ、ねえっうちらと喋ろー?」


 立ちはだかる女ども。

 うっぜ…よくこんなの相手してたな。

 理解できねぇ。


「黙れ、邪魔なんだよ」


 無理矢理退かして教室を出る。

 アイツ、ほんとにトイレか…?


「っ…斗真!!」


 どこに逃げたって諦めねぇ。

 俺が本気かどうか見せてやる。

 トイレで待ち伏せしてると、中から出てきた。

 俺を見て固まる美華。

“何があっても諦めない”

 それがお前を信じさせる唯一の方法なんだろ?

 なら上等だ。

 俺を本気にさせたこと、後悔しやがれ。


「みは…」

「斗真ー…あ、美華ちゃん」


 ちっ…タイミング悪い奴だな。

 やっと2人で話せるかと思ったのによ。



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