イチ*コイ



 廉が前の席に横向きに座って弁当を広げた。

 おばさんの弁当美味そうだな…。

 俺もビニール袋からパンを取り出した。


「そう言えば美華ちゃんって徳永と知り合いなのかね?」

「は?」


 思わず口に入れようとしたところで止まった。

 そんな俺を知ってか知らずか続ける廉。


「さっき弁当箱持って教室出ようとしてたからさ、どこ行くの?
 って聞いたら保健室って言ってたから…」


―ガタンっ

 勢い良く立ち上がったから音が鳴る。

 けど…ンなこと気にしてられっか!


「斗真、どこ行く気だよ!?」

「ああ!?決まってんだろ、保健室だよ!!」


 あの野郎と美華を2人にさせるか…!

 まじで走って保健室に向かう。

 何もされんなよ…!?

―ガラッ

 保健室のドアを開けた。

 止む話し声。

 俺を見上げる、大きな瞳…。

 無防備なその姿に腹が立った。

 何でこいつはこんなに呑気なんだよ…。

 男と女の2人だけの保健室がどんだけ危ないのか、わかってねぇ。


「……え、何で…?」



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