イチ*コイ



 ほんとにコイツは、俺の予想を上回るな。


「…な、何で……っ」

「名前。俺は大森じゃねぇ、斗真って呼べっつったろ」


 口を押さえ、俯く美華。

 俯いても真っ赤な耳が見えてンだけど。

 ほんと、バカ。

 まあそんなとこも可愛いんだけどな。

 まじ俺ハマってるわ…。


「そんな理由…で、」

「そんな理由?
 俺にとったら十分な理由だけどな」


 美華の髪に手を伸ばす。

 柔らかくて気持ちいい。

 シャンプーは乃亜と同じだけど、美華の髪のほうが柔らかい気がする。

 痛んでないからか?


「お前が逃げても俺は逃がさねぇ。
 お前は俺のモンだ」


 顎を掴んで顔を上げさせる。

 周りのバカ女どもが叫んだ。

 ちっ…いいムードぶち壊し。

 せっかくもう1回くらい奪えるかと思ったのにな…。

 美華が意識しだしたじゃねぇか。


「――っ!」


―ぱんっ

 渇いた音が廊下に響いた。

 少しずつ熱くなる左頬を撫でる。

 …こいつ、案外猟奇的だな…。



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