イチ*コイ



 近くで見たら結構がっちりしてる身体。

 こいつ、運動部だったな…。


「お、諦めたか?」

「…うぜっ」

「ハハハ」

「い"っ…何しやがる!」

「素直じゃないなー」


 つねられた手を解こうとしても、離れない。

 どんだけ力あるんだよこいつ…。


「お前みたいな盲目的な奴の扱い、慣れてるから」

「……」


 …俺が、盲目的?

 感情で動いてるっつーのかよ?

 否定できなくて、言葉を呑み込んだ。

 昔の俺は、損得で動いていた。

 それでも、どこか他人事で

 何にも執着してなかったのに。

 …美華に出会って、変わったんだ。

 だからこそ手放したくない…。

 誰にも渡したくない。


「…あの子には、そういう風にさせる何かがあるからな」

「…は、何か言ったか?」

「いや、別に?
 ほら着いたぞーそこ座って」


 隠しもせずに舌打ちをしてから座る。

 ふと、美華の泣き顔を思い出した。

 途端に痛みだす胸。

 …俺が泣かせたんだよな…。


「ほれ」



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