イチ*コイ
「前に言っていたんだけど、斗真は好きって言う感情がわからないんですって。
興味がないのよね…」
悲し気に言うユカリさん。
斗真くんは、好きって感情がわからない。
だから乃亜の気持ちに応えてくれないの?
でも、じゃあどうして…あたしにあんなこと言ったの?
「ふふ…」
「え、何ですか?」
「美華ちゃんみたいな子、初めてだなって思って」
店員からカップを受け取ってユカリさんが言う。
そりゃあ…あたしは、美人でも可愛くもないし。
チビだし足太いし…ブスだし。
「あぁあっ、悪い意味じゃないのよ?
ただ――…っ」
「私もそう思うわ」
凛とした声。
どこかで聞いたことがあるような…。
そう思って、椅子に座ったまま頭だけ振り返る。
「あ…っ」
忘れもしない、その人。
柔らかなハニーブラウンの長い髪に小さな顔。
パッチリ開いた大きな瞳。
スラッとした長い手足。
秀麗な顔立ちが人目を惹く。
「…和泉」
「ユカリ、久しぶりね」