イチ*コイ
ぎこちなく離れる背中。
…何気に傷付く。
きっと無意識なんだろう。
部屋を包む沈黙。
暗幕の向こうは賑やかなのに、な。
「斗真ー!」
素早く開く暗幕。
どこか焦ったようなそいつの表情。
「ザラメあと2袋しかないんだ!
買ってきてくれ!」
「あ?…おう」
財布を持って立ち上がる。
確か近くのスーパーにあるんだよね。
さっさと買ってくればあとはもう仕事ないだろ。
「あ、あと割り箸もな!
よろしくっ」
「りょーかい」
ドアに向かって歩いていく。
美華は…来ねぇだろうし。
「あ…ま、待って!」
「…、」
振り向くのは気まずくて、立ったままでいる。
…声、震えてんのバレバレなんだよ…っ。
「あたし、も…行く。
だ、だってあたしも…買い出し係、だし」
目頭が熱くなって、喉の奥が引き締まる。
責任感があるだけだってわかってる。
けど…その言葉が、うれしくて
変わらない一人称が、うれしくて
震えながら、口角を上げた。