イチ*コイ



「…早く行くぞ」


 早めに脚を動かす。

 自然とにやけていく口許を、止める術がなかった。







 大量のザラメと割り箸を買う。

 2時間はあっという間で、結局何も話せなかった。


「斗真ー、交代だよー」

「…おう」

「じゃああたし…もう行く、ね…っ?」


 そそくさと出ていこうとする美華。

 とっさに、その手首を掴んだ。


「え…っ、」

「…どこ、行くんだよ」


 一緒にいても気まずいだけ。

 そんなのわかってるけど、一緒にいたいんだ。


「…保健室、だけど……」


 保健室=徳永

 あんな奴のとこ行かせられるか…っ。

 一気にどす黒いものが溢れてくる。


「行くぞ」

「え、あ…っ」


 手首を引っ張って歩き出す。

 どんだけ気まずくたっていい。

 他の男のとこに行かせるよりマシだ。


「あ、斗真ー美華ちゃーん、2‐3のたこ焼き買ってきてくれるー?
 よろしくー!」

「俺3‐1の焼きそばー」

「私2‐6のクッキーねー」


 何か思いっきりパシられてる…!



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