イチ*コイ



 クラスの奴等を睨むために振り返ると、目が合った。

 みんなにやりと笑ってる。

 …これも廉の仕業かよ…はあ。


「代金2倍にして返せよ」

「斗真の鬼ーっ!!」

「ふんっ」


 今度こそ歩き出す。

 握っていた手の力を弱めた。

 アザとか出来たら困るし。


「あの、あたし……っ!!」


 息を呑む反応が気になって、美華を見る。

 美華は俺じゃなくて、正面を向いていた。

 つられて正面を見る。

 そこにいたのは…乃亜、だった。

 メイド服を着て美華を睨んでる。

 美華を見れば、震えていた。

 …何で、気にするんだよ。


「ごめん、離して…っ!」

「あ…っ」


 手を、離してしまった。

 走って逃げていく美華。

 その背中を、見詰めた。


「…お姉ちゃんには渡さないから。
 返事、待ってるよ?」

「っ…てめえ、」


 にっこり笑う乃亜は、どこかおかしかった。

 目が、笑ってない。

 黙って固まっていると、乃亜も通りすぎて行った。







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