イチ*コイ



 まあ決勝は午後からだからいいけど。


「つかお前試合は?」

「1回戦敗退でございますー」


 しょぼ……っ。

 喋りながら教室に向かう。

 飯食わねぇと…。

 時間が合わなかったらしく、教室にも美華はいなかった。

 チッ…どんだけ運悪いんだよ。

 廉の話を聞き流しながらパンを食べると、すぐに時間になった。

 まじでだっる……手ぇ抜くか?


「頑張れよ!
 美華ちゃんも見てるぞ」

「はあ?どこに…、」


 出入口近くの、壁に

 間中と喋って笑っている美華がいた。

 …笑ってるとこ、久しぶりに見た。

 仕方ねぇ…やってやるか。

 ブザーが鳴ってゲームが始まる。

 飛んできたボールを受け取って、走る。

 俺の前に立ちはだかる“ダレカ”。

 俺の邪魔は、させねぇ。

 振り返るフリをして身体を捻る。

 少し出来た隙を使って、飛んでボールを放った。

 綺麗にリングに吸い込まれるボール。


「3ポイント!」


 その瞬間、体育館が湧いた。

 ハッ…元バスケ部ナメんなよ。

 パスカットをしながら昔を思い出す。

 俺は中学の頃、バスケ部だった。



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