イチ*コイ
―ブブブ…ブブブ…
ポケットの中のケータイが震え出した。
気付かれない内にバイブを止める。
…って、この距離で気付くわけねぇか。
10メートル以上あるんだし。
っと、メールメール…って廉かよ。
20XX/12/24 10:03
From:廉
Sub :No title
――――――――――――
美味くやれよっ★
---end---
………は?美味くって…。
そこで、言いたかったことがわかった。
“上手くやれよ”だ。
単なる変換ミス。
それできっと美華が待ってるのは…来るはずのない、廉らしい。
あの野郎…何かにやにやしてると思ったら、こういうことか…。
とりあえずため息を吐いて、また美華を見る。
時間が過ぎてるのか、不安そうに時計を見詰めていた。
…行かなきゃ、だよな。
美華を不安にさせんのは嫌だ。
きっと美華のことだから、どっかで事故ったんじゃ、とか考えてそうだし。
重く感じる足を踏み出した。
足音で気が付いたのか、俺のほうを見る美華。
その顔が驚愕で固まった。
震える心臓に気が付かないフリをして口許を歪ませる。
「……よう」