イチ*コイ



 取引で向かった先で、偶然女と再会する。

 お互い忘れられなくて、そしてハッピーエンド…なんて話だった。

 そんな偶然、あるわけねぇのに。

 隣からは嗚咽が聴こえる。

 …こいつ、感動しやすいんだっけ。


「…大丈夫か?」

「っ…う"ん、大丈夫…」


 とりあえず出て、パンフを買うらしい美華を見送った。

 壁に寄りかかって待つ。

 …考えてみたら、2人で出掛けんのって3回目じゃねぇ?


「あれ、斗真ー!?」

「まじだ!斗真じゃん!!」


 駆け寄ってくるギャルを見る。

 誰だこいつら…つかケバい。


「久しぶりじゃーん!
 連絡取れないし!」

「1人?うちらと遊ぼうよー」


 記憶にねぇな…廉なら知ってるか?

 とりあえず美華が来るまでに片付けねぇと。


「彼女と一緒だから放っとけ」

「はあ!?彼女!?」

「それって九条…乃亜?だっけ」

「ちげぇし」


 こっちに来ていた美華が踵を返して逃げる。

 ちっ…逃がすかっ!


「美華っ!!」

「美華って…」


 押し退けて走り出す。

 美華は脚遅いし、今日はブーツだから更に遅いはず。



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