イチ*コイ



「ほら痛がってんだろー?
 大人しく顔見せろって」

「絶対嫌です」


 今までずっと、ケイさんが女を落とすところを見てきた。

 男がいたってケイさんが立ってれば近付く。

 声をかければ顔を染める。

 少し微笑めば、もうこれで落ちる。

 どんな女だってな。

 男がいたってそれなんだ、美華が落ちないはずない。

 こいつ、人一倍免疫ねぇし。


「一瞬だけだろ?見せろよ」

「そんなに見たいんなら覆面してください」

「何で覆面!?」


 顔隠れるからに決まってんだろ。

 目と口しか出てなかったら惚れないだろ、うん。


「つかケイさん、こんなとこで何してるんすか?
 太陽とか似合わないですよ」

「お前もな。俺は妹のプレゼント探しだよ」

「へえ、今日ですか?
 愛足りてないんじゃないですか?」

「何だとコラ!?俺はなぁ…!」


 …よし、かかった。

 妹の話出せば美華のことは忘れるだろ。

 ノンストップで話すし。

 毎回、いつ息継ぎしてんのか謎だけど。

 少し手の力を弱める。

 後ろで、息を吐く音がした。



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