イチ*コイ



 この調子じゃ聞いてなさそうだしな。

 大きな窓から青い空が見えるジャケット。

 俺と美華の共通点、それはThe wing。

 The wingっつーのはバンドの名前で、メンバーは5人。

 まだインディーズバンドなんだけどな。

 ぜってぇプロになるし。


「ほら、貸してやるよ」

「ありがとう…!楽しみっ」


 にっこり笑う美華。

 その笑顔を見て、心が暖かくなった。


「おー」

「ちょっと、早速イチャついてんの?
 まだ朝なんだからやめてよねーもう」


 そう言う間中でさえにやついていて

 そう言えば俺、協力してもらったんだっけ。

 すっかり忘れてた。


「間中も…さんきゅーな」

「は…熱でもあんの?」

「お前失礼だな」

「梢っ!」


 暴言吐こうが、こいつの疑いは晴れないらしい。

 なんだよ…そんなに俺が礼言うのって珍しいのか??


「何かあんた…丸くなったねぇ」

「は?」

「美華効果かね」


 にやにや笑う間中は無視。

 少しずつ少しずつ、付き合ってるんだって自覚する。



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