イチ*コイ



 ずっとパシられてきたせいで抵抗する気も起きねぇし。

 姉貴限定だけどな。

 それから電車に乗って、俺の家まで行った。

 ドアを開けた瞬間、思わず声が漏れた。


「…げ」


 姉貴のブーツの他に、見慣れた靴が2セット。


「斗真、どうしたの?」

「…や、なんでもねぇ」


 バレねぇように2階行けばいい話だ。

 そう決めて、歩き出す。


「お邪魔しますー」

「しーっ」

「へ?」


 美華の口を塞ぐ。

 珍しく家にいるとか、運悪すぎるだろ…。

 そのとき前触れもなくリビングの扉が開いた。


「――っ!?」

「おかえり、美華ちゃんもいるわね?
 こっちに来なさい」

「いや…俺の部屋に、」

「 は や く 」


 にっこり笑う姉貴の後ろから、黒いオーラが見えた。

 姉貴って腹黒いよな…はあ。


「和泉さん、お久しぶりです」

「久しぶり、こっちいらっしゃい」

「はい」


 黙ってついていく美華。

 いつの間にか調教されてたのか…?

 それか持って生まれた性格か…。



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