イチ*コイ
ガタン、と大きな音を立てて椅子から立ち上がる。
そのまま俺に背を向けるようにして立った。
「…どうした?」
「…あのね、さっき…ある人に告白、されたの」
「っ…おう」
静かに響く曲はあの日と同じだった。
小さな背中を見つめる。
「…人に好かれるのは、やっぱり嬉しいよ」
「っ…美華」
「けど…あたしは、斗真じゃなきゃだめだって、わかった」
振り向いた美華の目には涙が溜まっていた。
雲間から光が入ってきて美華を照らす。
すげぇ美人なわけでもない
すげぇスタイルがいいわけじゃない
でも俺はこのとき、こいつが世界で1番綺麗だって思ったんだ。
「嬉しかったよ、でも1番は斗真なんだよ…!」
「美華…っ」
駆け寄って強く抱き締めた。
その衝撃で涙がブレザーに落ちる。
「斗真…」
「わかってるから…何も言うな」
「っうん…」
ただこうして2人でいるだけで幸せだった。
なんとなく手のひらを合わせてみた。
第2関節くらいまでしかない小さな手。
俺が守るんだ…。