イチ*コイ
「人間なんだから…当たり前だろ」
「ふふ…そうだね」
そこで美華が向きを変えて、向かい合う。
後ろから包んでいたのも近かったけど、正面を向くとさらに近い気がした。
美華の真っ直ぐな目を見詰める。
「でもねあたし、今は人間でよかったなって思うの」
「…何で?」
「だって他の動物は、子孫を残すためにしか交尾をしないでしょう?
そこに愛なんてないんだよ。
パンダとかは別にしてね」
交尾って…ああ、うん。
そうゆうのなら照れずに言えるんだな。
「人間も所詮、愛なんて子孫を残すために脳が働きかけてるだけだけど。
…でも、人間は人を幸せにすることが出来るから」
「美華…」
「子孫とか、遺伝子とか関係なく…斗真が好きだよ?
愛してるよ?」
髪を押さえる、ふとした仕草がやけに綺麗に見えた。
俺だって…お前がいるだけで、些細なことでも震えるくらい嬉しくなる。
小さな手と繋いだ手がやけに嬉しくて、顔が緩んでしまうんだ。
「俺だって…愛してる」
「斗真…」
ぎゅうっと抱きしめて、何度もキスをした。
激しいキスをする気にはなれなくて、優しいキスをする。
俺が動く度に、ケータイに付けたシルバープレートのストラップが揺れた。
触れた唇から、俺のお前を想う気持ちが伝わればいいのに…。
「離れたくないよ…」